須藤 正義さん(ひさの里 理事長)&須藤 めぐみさん(ふじの木村 施設長)

様々な活動を通して交流のある方を紹介で繋ぐ、リレートーク形式のコーナーです。北九州に仕事や生活の拠点をもち活躍している方々から、この街の多彩な魅力を語っていただきます。

第23回 北九州市の良いところ再発見

目指すは「味ではどこにも負けない食パン専門工房」
利用者の経済的自立の一助になるよう収益性も確保

ほんのり温かい焼きたての食パンは、外側はカリッと香ばしく、真っ白な生地はふんわりしっとり。多い日には300本以上の食パンを焼いているこちらのパン工房では、7名の障害者の方と3名の職員が早朝からそれぞれの仕事に励み、生き生きと働いておられます。

「この作業所の主役は知的障害のある利用者さんたち。彼らは夏場の暑い日でも黙々と自分の仕事をこなし、長時間の作業にも忍耐強く取り組んでくれています」と話してくださったのは施設長の須藤めぐみさん。

工房にはめぐみさんの次男ひさのりさんの姿があります。

「ダウン症という障害を持って生まれた次男が、養護学校高等部を卒業後、市内の作業所にお世話なっていましたが、次男の祖母が『自分たちでも障害者福祉のお役に立てることがあるのでは』という熱い想いから、平成14年にふじの木村を立ち上げることができました」。

その準備段階で着目したのがめぐみさんが家族のために作っていたパン。試行錯誤の末、利用者の特性や施設の効率を考えて食パンのみを作ることにし、味ではどこにも負けない食パンを目指したそうです。

製造だけでなく、販売の現場にも利用者が出向く
支援の輪の広がりが地域社会での定着に

ふじの木村の食パンは、厳選した小麦粉本来の味を引き出すために、イタリア、シチリア島トラバニの塩田で作られたミネラルと地中海の旨みをたっぷりと含んだ天日干し自然海塩を用いています。

またバターやマーガリン、生クリームにもこだわり、発酵促進剤や香料などの添加物を一切使わず手間と時間をかけじっくりと熟成させ丹念に焼きあげることで、小麦本来の味としっかりとした食感が楽しめます。

原料から製造工程のすべてに妥協を許さず、自信をもって提供できる食パンを目指してきたと語る須藤正義さん。「開設当初は、地域の学校のバザーに出店するなどし口コミでその評判が広がり、職場の方からご予約をいただくようになりました。

配達へは利用者ができるだけ出かけて行き、社会との接点をもつよう心がけています。味には自信をもっていますが、それだけではなく、何事にも一途に取り組む彼らのエネルギーが発するオーラによって、ご支援の輪が広がっていることに感謝しています」。さらに「ここまでの道も切り開いてきたというよりも、導かれたという気持ちですね」とも。

パン工房に隣接して建てられた手作り工房でも、多くの利用者の方がカレンダーや布ぞうり、マスコットなどの小物を作っています。

「障害の内容によって関われる作業が異なりますが、職員の指導を受けながら毎日作業ができることが、利用者にとって大切なやりがいとなっています」とめぐみさん。

材料となる布などは、ほとんどがご支援くださる方々が持ち寄ったものでまかなわれているそうです。

医療体制やサービスが整う北九州市立総合療育センター
出会いや交流によって、人の温もりが感じられる街へ

正義さんによると、北九州市の障害福祉に関する取り組みは他地域に比べてとても充実しているとのこと。

「北九州市立総合療育センターという施設が小倉南区にあります。ここではさまざまな機能や活動、社会参加に制限や制約のある子どもたちの医学的治療や生活支援サービスを提供しており、25年位前ひさのりさんが通っていたころ、遠くは広島や長崎からも訪れる方があるほど。その充実した療育やサービスは北九州市が自慢できることの一つだと思います」。

総合療育センターとは、発達障害(脳性まひ、知的障害など、幼いころからの医療をはじめ全体的な特別なニーズがある方の総称)のリハビリテーションを行う病院、保育を通じて発達を促す通園、さらには生活を支える福祉施設の総合的機関のこと。

多くの専門職が医療やリハビリテーションのほか、生活に関わるあらゆる相談に応じてくれます。

「わが子が障害を持って生まれてくると、誰もが将来を悲観してしまうでしょう。私たちもかつては『私たちがこの子を幸せにしないといけない』と思っていました。でも、人との出会いやそこから始まった今の事業、そして家族のきずなを考えると『この子は私たちを幸せにするために生まれてきた』と感じるようになりました」と正義さん。

木々に囲まれたふじの木村の穏やかなたたずまいは、人と人とのつながりによって生まれる温もりに包まれているよう。私たちの身近な環境も、障害の有無にかかわらず交流の輪が育める暖かい街でありたいものです。

インタビューを終えて

自然パン工房からスタートした「ふじの木村」の障害福祉サービスは、手作り工房を立ち上げるなど、その活動の場は広がっています。

さらに平成20年11月30日には、NPO法人北九州小規模連によって「一丁目の元気」が小倉北区京町にオープンしました。

次回は市内の小規模作業所・障害福祉サービス事業所でつくられた商品を販売しているお店「一丁目の元気」をご紹介します。

レポーター/崎間恵子

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