重渕雅敏さん(北九州商工会議所会頭)

北九州市に仕事や生活の拠点をもち活躍されている方々から、街の魅力を語っていただくこのコーナー。シリーズ第10回目となる2006年1月は、北九州商工会議所会頭 重渕雅敏氏に北九州市の展望を伺いました。
第十回 北九州市の良いところ再発見
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  異なる歴史背景や産業を育むコンパクトシティの集合体  
 
Q.他の都市と比較して、北九州市にはどのような特長があると思われますか?
北九州市は、かつてそれぞれに違う役割を担った5つの市が合併して7つの行政区として誕生した経緯から、港町や商業の町、鉄工業の町など、独立した特長をもつ都市が集まっていると思います。九州や大陸への玄関口として栄えた門司港、鉄の町八幡、門司とはまた違う性質をもつ港町若松など、その街の特性は今もなお色濃く残っています。それは各地で伝承されているお祭りの華やかさを見ても、とても良くわかりますね。時代の変化と共に見た目は変わっていきますが、基本はしっかりと受け継がれ、それぞれの街で日常生活が快適におくれる経済圏・コンパクトシティが点在する都市、それが北九州市だと言えます。一極に集中し移動に時間をとられてしまう大都市よりも、日々のデイリーライフが徒歩圏内で快適に過ごせる地域こそが“住みよい街”だと思います。街づくりを考えるうえで、この点を見据えて特長をのばしていけば、もっと良くなっていくのではないでしょうか。
 
  東アジアの玄関口として期待される新北九州空港2006年3月16日開港  
 
新北九州空港
 新北九州空港

Q.北九州市は“物づくりのまち”と言われますが?
北九州市が歩んできた20世紀の物づくりと、21世紀の物づくりは大きく変わっていきます。これまでとは違う新しい産業の基盤整備が、北九州市を中心とした北部九州エリアで着実に進んでいるのです。一つは、日本の主要メーカーの生産拠点やそれに伴う関連企業が次々と誕生している自動車産業。もう一つは、学術研究都市等で集積されている半導体やデジタル家電、ロボット、情報などのIT産業です。そしてそれらが今後さらに発展していくうえで重要な役割を果たすのが、2006年3月16日に開港する新北九州空港なのです。24時間運用が可能な海上空港なので、国内のみならず東アジア、さらには世界への玄関口として大いに期待されます。主に貨物運輸を担うなど、都心部にある福岡空港との役割分担をすることも大切です。すでに生産物流拠点として稼働している、ひびきコンテナターミナルの存在も欠かせません。これらによって、北部九州全体が栄えていくと確信しています。

 
  北九州の特性を活かした観光資源高度な技術をアピールする産業観光  
 
重渕 雅敏 氏
 

Q.身近なところで、北九州市の良さをもっとアピールできる点は?
観光と言うと景色や名物料理などをすぐに思い浮かべますが、この街には他にもっとアピールできる資源があります。それは世界レベルの最先端技術という産業観光資源です。代表的なものをあげると、新日本製鐵の製鉄技術やテムザック・安川電機のロボット技術、東陶の衛生機器、日産自動車など。また、エコタウンで官民共同で進められている、各種リサイクルをはじめとした環境産業も注目されています。先進の技術を目の当りにできる体験というのは、とても貴重だと思います。これらの情報を発信して理解をしてもらえれば、もっと多くの人に足を運んでもらえるのではないでしょうか。今まで旅行会社のツアーといえば、福岡空港発着で企画されていましたが、新北九州空港が稼働し始めれば、北九州とその周辺エリアを含めたあらゆるニーズに対応できる魅力ある旅行が企画されることでしょう。21世紀型産業と東アジアの拠点、そして交通交易の拠点、これらが北九州市発展のキーワードだと言えるでしょう。

 
  ここ住む人が第三者の視点で街を見直し街の良さをアピールできる魅力づくり  
 
Q.この街に住んでいながら、良いところを知らない人も多いと思いますが?
北九州は全長200kmを超える海岸線をもち、海の見える風景に様々な顔があるのも特徴的だと思います。門司の船だまりや若松北海岸などはそれぞれに違った風情があり、海岸線を巡るのも楽しいものです。また、グリーンパークのバラ園は私の好きな場所の一つですが、隣接する響灘緑地に素敵な遊歩道があることを、私自身最近知りました。近くに住んでいながらまだまだ知らない所も多いですね。また、中心市街地の魅力をもっと向上させて、にぎわいを取り戻そうとする活動も進んでいます。“食”をテーマにしたイベントを行ったり商店街の人の回遊性を高めるための施策や、高齢者が安心して買い物ができるようなサービスなど、もっと小倉の街を楽しんでもらおうと知恵を出し合っています。多くの人が訪れ楽しんでくれることによって、街の良さを再認識し外に向かってもアピールしてくれるでしょう。そのためにできることが、まだまだたくさんあると思っています。
 
  インタビューを終えて  
 
 自然の大きな懐に抱かれながら、様々な歴史と文化を育んできた街・北九州市には、まだまだたくさんの魅力や可能性が秘められていると感じることができました。そして、2006年3月16日、新北九州空港の開港がとても楽しみです。
レポーター/崎間 恵子
 
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