統括理事 中村佳奈さん(一丁目の元気)
様々な活動を通して交流のある方を紹介で繋ぐ、リレートーク形式のコーナーです。北九州に仕事や生活の拠点をもち活躍している方々から、この街の多彩な魅力を語っていただきます。
障害のある方の手づくり製品ショップ
地元企業はじめ多くの方から熱い応援!
人にやさしい、ぬくもりの店「一丁目の元気」は、NPO法人・北九州小規模連によって運営されています。開設に至るまでの経緯を、統括理事の中村さんに伺いました。
「準備がスタートしたのは、オープンの約1年半前の平成19年4月。
それまでは小さな作業所が集まった連絡協議会という形で、それぞれが物づくりをしていました。その製品を扱うお店が持てるといいねという話しは常々あったのですが、そこへ行政からアンテナショップをやってみないかという打診があり、検討がはじまりました」。
作業療法士として下関リハビリテーション学院で指導をされている中村さんは、当初から活動に参加。8月には札幌の「元気ショップ」の視察に行かれたそうです。
「札幌のお店は地下鉄のコンコースにあり、人の行き来が盛んで、小さいながらコンビニ感覚で日配品がとても良く売れていました。
また、運営自体は行政がしていて民間に委託という形。それを見たうえで北九州市ではどのような形がふさわしいのか試行錯誤が続きました」。
市内で同様の立地を探すのは難しく、また委託ではなく自主運営など形態にも大きな違いが。
「補助金を受けながら自分たちで運営するので、思いを形にできる半面、責任も重い。障害者福祉の面では実績がある私たちでも、経営という面ではずぶの素人。
そこを支えてくださったのが、様々な形で協賛いただいた企業や団体の方々です」と当時を振り返る中村さん。地元企業を訪ね活動の主旨を説明すると、賛同していただき快く支援を申し出てくださったそうだ。TOTO株式会社からはユニバーサルデザインのトイレの寄贈。
業務用車両は第一交通産業株式会社からなど、この他にも多くの企業や団体、個人から支援が寄せられました。「店舗の大家さんもとても理解があり、『京町が寂れているので、いい形で活用してもらえ街が活気づくなら』と、全面的に支援していただきました」と、開設にあたっての多くの出会いに感謝していると語る中村さん。地域との深い関わりなくして、お店のオープンはなかったようです。
障害者福祉の枠を超えて育まれる
地域の活性化と魅力ある街づくり
オープンから3ヶ月。「苦労を言えばいっぱいある」と中村さん。
「この不景気の時代、デパートなども苦しい大変な時期ですから当然ですね。厳しいけれども、お店にいるとお客様の生の声が聞けますから、もっといいものを作らないといけない、努力していかなければいけないと思います。儲かっているかというと、そうではないけれど、働く意欲として、3年後には運営を成り立たせるという目標がありますから、売れないときには『なぜ売れないのか』『どうすればいいのか』とみんなで考えています」。
さらに、障害のある方が作業するという事の意味も、これまでとは違ったものになってきたとも。
「お店を始めるまでは、日々の活動は製品をつくるというよりも時間を費やすためのもの、作業をするための作業でした。それがお客様に買っていただける物をつくるという、働くことの意味が生まれたんです。その点からもこの店の存在意義があったと実感する3ヶ月でした」。
また製品を買うというだけではなく、ボランティアや企業の方、いろんな方が「一緒に何かできないか」と声をかけてくださる機会も増え支援の輪が広がっているそうです。
「地域で暮らすというキーワードを考えた時、障害者福祉という枠組みを越えて、地域全体で住みやすいネットワークづくりが必要だと思います。福祉に特化したものではなく、障害のあるなしにかかわらず小さな子どもから高齢の方まで皆が自然と助け合えるような街。北九州は人が温かく、いい意味で人との付き合いが残っている街です。今回の経験を通じてさらにその思いを強くしたので、この街はそれができると実感しています」と中村さんは力強く語ってくれました。
困っている人を見かけたら自然と手を差しのべるという、ごく当り前のことができる街。自分たちが住みやすい街が障害者にとっても住みよい街。草の根的な地域づくりのシンボルともいえる「一丁目の元気」を通じて、人の温かさとこの街の明るい未来を感じることができるような気がします。
四季折々楽しめる癒しのスポット
ウォーキングでリフレッシュ!
本業である作業療法士として教壇に立つかたわら、週3日は店頭におられる中村さん。
とても忙しく、なかなかゆっくりとプライベートな時間を過ごすことができないそうですが、身近でお気に入りの場所など、お勧めのスポットをうかがいました。
「自然が好きで山歩きなどが大好きですね。身近では、戸畑の金毘羅山は四季折々の景色が素晴らしく、お気に入りの場所です。美術館のあたりや金毘羅池などの遊歩道を歩くのは楽しいですよ。桜の季節や新緑の季節、時間があれば散歩したいですね」。
歩くのが大好きなので、今年は100キロウォークに参加してみたいとも。毎年秋に行われるこのイベント、昨年は開店準備で忙しく参加できなかったそうです。
また、食べ物についてお尋ねすると、四国から結婚を機に北九州にやってきた中村さん、はじめはトンコツラーメンの匂いにとても驚かれたとか。「最初はびっくりしましたが、今は大好きです。
よく行くお店は戸畑の中本町商店街にあるえっちゃんラーメン(宝雲亭)。夜遅くまで開いているので、宴会の後などに仲間と寄ったりしますよ」。中村さんの元気の源は、このあたりにもあるのかしれません。
お話しをうかがっている間にも、店内には次々と出来たてのパンやお菓子、お弁当類が、障害のある方ご自身の手で搬入され陳列されていきます。
障害のある方と中村さんをはじめスタッフの方々、さらには地元企業など多くの支援者の力によって、北九州にまた一つ魅力あるスポットが誕生しました。
インタビューを終えて
お店では季節を取り入れた展示や、障害のある方やボランティアが一緒になって手づくり教室を開くなどのイベントが行われています。
詳しくはHPや店舗内のポスターなどでご案内しています。
パンやお菓子、小物の販売の他に、イートインコーナーもありますので、小倉都心部へお出かけの際には、ちょっと立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
レポーター/崎間恵子