若松、その「時」と共に

若松、その「時」と共に


火野葦平文学碑

若松は日本の産業の歴史と共に歩んできた街として。

火野葦平の「花と龍」にも代表される熱い街として。

その名を全国に知られています。

また、「花と龍」を筆頭に、多くの映画やテレビの作品が若松でロケを行ってきました。

「大都会PART2」では渡哲也、松田優作他の城西署の面々が脇田港で密売組織の犯人を逮捕し、「風の刑事」では柴田恭兵扮する刑事が本町付近で聞き込みをしていました。


旧古河鉱業若松ビルと若戸大橋の見える風景

「ウルトラマンコスモス2」では怪獣に破壊された若戸大橋が洞海湾に突き刺さっていました。最近では旧古河鉱業若松ビルが「プルコギ」に登場していました。

今回は若松の「時」の流れを観ることのできる主な作品をご紹介します。

若松の今昔を彩る作品群

宇宙大怪獣ドゴラ(1964年東宝)


若戸大橋

当時は特撮映画の全盛期。様々な怪獣が誕生して日本中で暴れ回っていました。

そんな中、石炭を主食というクラゲのような怪獣ドゴラが誕生しました。

石炭を主食?

そうです石炭と言えば若松です。さらに今も昔も変わらないのですが、怪獣達は必ずランドマークとなる建造物を狙います。そう、当時東洋一を誇った若戸大橋がそこにあったのです。

二つの重要ポイントに惹かれたドゴラは若松を襲撃!

我らの若戸大橋はドゴラの持つ触手によって吊り上げられ、あっけなく洞海湾に叩き落とされました。

この作品は特撮映画と言うこともあり、若戸大橋やその周辺の街並みが精巧なミニチュアによって再現されています。

ところで、当時高塔山にはロープウエイがあったことはご存じでしょうか。昭和45年まで営業されていた若松高塔山ロープウエイ、この作品の中でその動く勇姿を観ることができます。

網走番外地悪への挑戦(1965年東映)


旧ごんぞう小屋

我らの高倉健さんも、それも「網走番外地シリーズ」で若松に足を踏み入れていました。

バスに乗り、スモッグにかすんだ若戸大橋を眺めながら若松に乗り込んでゆく健さん。

主に現在のエルナード周辺で撮影され、まだまだ石炭産業で活気のある街が映し出されています。

そう、旧ごんぞう小屋も当時の元気な姿が確認できますよ。

でっかい、でっかい野郎(1969年松竹)


栄盛川周辺

この作品では、もう現在では観ることのできない若松を観ることが可能です。

オープニングタイトルに登場する栄盛川周辺、昭和50年に姿を消した走る市営貨物電車の姿。共にもう二度と観ることの出来ない貴重な映像です。

また、長門裕之さんを乗せた人力車を渥美清さんが引いて、若戸大橋の車道を戸畑から若松へ渡るシーンがあります。若松出口のあたりを走る人力車の奥に、今も現存する若松東宝の建物を確認することが出来ます。

新・仁義なき戦い組長最期の日(1976年東映)

菅原文太主演でのシリーズ最終作もロケを行っていたのです。。


エルナードからの若戸大橋

今はもう取り壊された旧麻生鑛業ビルが警察署として登場。主に若戸大橋を背景に、現在のエルナード周辺で撮影が行われました。

ちょうどこのころ北九州市内では暴力事件が相次いでおり、前年に門司港で撮影が行われた「新・仁義なき戦い組長の首」の際には撮影の反対運動が起き、一部のシーンをスタジオに置き換えて撮影されています。

半年後に若松で同じ仁義のロケが・・・すみません反対運動があったかは不明です。


若松東宝

まあ、撮影の反対運動は全国に「北九州=怖い街」という印象を植え付けてしまうのではと考えた上に起こったことでしょう。

ところで、最近一部の方々から「(仁義みたいな映画は)北九州のイメージが悪くなる」「こんな(仁義なきみたいな映画)作品があったことを紹介しないでほしい」等ということを言われたことがあります。

無かったことに?・・・どうなんでしょう。あくまでも映画の中の若松や北九州なのですが。まあ、そうなると東京やニューヨークはとんでもない街ですよね。

じゃあ、火野葦平の「花と龍」はどうなるんでしょうか。

玄海つれづれ節(1986年東映)


歩道用エレベーター付近

今の若い方は知らないと思いますが、若戸大橋には歩道があったのです。エレベーターで橋に上がり、若松と戸畑の間、ちょうど洞海湾の上を歩くような形でした。

そこを吉永小百合さんが歩いた!

当時はもうこれだけでアンビリーバブルな話だったのです。映画自体も若松が舞台の作品で、随所にシンボルである若戸大橋が登場します。

また、ボロボロの旧ごんぞう小屋や若戸渡船、栄華を誇った映画館の取り壊しシーンなど、当時の若松が満載です。さらに生活感のある街並みの中に吉永小百合さん、風間杜夫さん、八代亜紀さん達の俳優人がうまく溶け込み、情緒を感じさせる映画空間の「若松」が構築されていました。

産業の街から環境の街へ。そして・・・


お約束、高塔山からの全景

主な作品として紹介した5作品に共通して映し出される風景があります。

高塔山から若戸大橋を望んだ風景です。

いわゆる「お約束カット」というわけで、北九州ロケや若松ロケを行った作品には必ず登場します。

このカットを、紹介した作品順に観ていくと、若松の大きな変貌に気が付きます。

スモッグに覆われた空、かすんで見える若戸大橋、遠くの景色は見えず、まさに公害の街。たとえ青空が見えても、その奥の工場群からモクモクと吐き出されている7色の煙。洞海湾に停泊している船舶も多く観られ、産業による街の活気を感じることが出来ます。


若戸渡船

しかし、それが次第にその船舶の数が減少し、今まで見えなかった小倉の足立山が見えるようになってきます。そして青空が広がり、海は輝を放ち綺麗になった空気と風の薫りを感じさせてくれます。

そこからは新たに生まれてくる生命の息吹が聞こえてきます。産業の街から環境の街へと生まれ変わった姿がそこにあるのです。映画やテレビなどの映像は、その「時」の移り変わりを客観的に伝えてくれます。

その「時」を確認し、未来永劫に伝えることが映像の使命でもあります。これから10年、20年、30年後の1ページにどんな「時」が確認されるのか、ヒジョウーに楽しみですね。

ライター/碇 義彦

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