渡部(わたべ)アサ子さん(北九州市立中尾市民センター 館長)

様々な活動を通して交流のある方を紹介で繋ぐ、リレートーク形式のコーナーです。北九州に仕事や生活の拠点をもち活躍している方々から、この街の多彩な魅力を語っていただきます。

第22回 北九州市の良いところ再発見

まちづくりの拠点として地域に開かれた市民センター
明るい雰囲気と楽しい企画で、多くの人が集う施設に

かつて「公民館」という名称で親しまれてきた地域の公共施設が、「市民センター」と名前が変わったり、新設されていることに気がついた方も多いのでは。


中尾市民センター

「これまで生涯学習の場として中学校の校区単位に置かれていた公民館から、総合的なまちづくりの拠点となるよう小学校区ごとに設置されたのが市民センターで、現在、市内の小学校数と同じ128カ所にあります。管轄も教育委員会から総務市民局の地域振興課へ移り、まちづくり協議会が総括するシステムになっています」と話す渡部さんが館長を務める中尾市民センターも、前身は沖田公民館だったそうです。

「はじめは何も分からず地域の方の顔や名前を必死で覚えました。そして2年目の昨年には建物の改修工事が行われ、間仕切りの少ないオープンなフロアやピンクやオレンジなど元気の出る色を使った明るい雰囲気づくりを実行し、ようやく平成20年3月に完成。3年目の今年度が再出発の年といった感じですね」。

隣接する公園でのお花見や大広間での映画鑑賞会、職員の発案で実施したゆかたの着付け教室など、これまでにない企画で市民センターに馴染みのなかった人でも訪れやすい工夫をする渡部館長。

これも、行政にかかわったことのない一市民であった渡部さんが、一般公募で館長になったからこそできた試みのようです。

母としての経験や「NPO法人北九州まなび場」の運営を経て
地域にある市民センターが担う役割の大きさを実感

家庭に帰れば主婦であり母でもある渡部さん。以前「NPO法人北九州まなび場」を立ち上げ、長く不登校児の支援活動をされていました。

「わが子が不登校になった時、その当時は相談する場所が少なく、ともすれば自分の育て方や子どもの性格を否定され二重に傷ついていました。その経験から、苦しい立場にある本人や家族の力になれないかと考え活動を始めました」。

昨今の10代が起こした事件のニュースに触れ、大きな問題になる前に発端となるような小さなサインがいくつもあったはずだと話す渡部さん。

「改まって相談窓口へ行くのがためらわれる人に、ぜひ市民センターを利用してほしいと思います。いろいろな情報を知ることができますし、第三者に話しを聞いてもらうことも大切。身近にある市民センターが果たす役割は大きく、これが私が館長に応募した理由の一つでもあるんです」。

地域の小中学校から講演を依頼された際には、積極的に市民センターの利用を呼び掛けているそうです。

現在、もっと地域の多くの方が楽しみながら参加できるよう「センターまつり」を企画中とのこと。「地域にあるさまざまな団体が連携して一つになる、賑わいづくりのきっかけになれば。

あれこれ考えるより、まずやってみようと思い行動することが大事です。北九州市内全域にこれだけの数の市民センターが整っているのですから、地域の方々にもっと知ってほしいですね」。

国の「環境モデル都市」指定を受け推進される
アジアの環境フロンティア活動の今後に期待

北九州市に住んで数十年の渡部さんに、好きな風景や町の魅力についてうかがうと「帆柱山が大好きで、出先でも帆柱山はどこ?って探してしまうほど。それと若松や門司の海岸線の景色も好きですね」と自然が一番に。


いのちのたび博物館

また、イノベーションギャラリーやいのちのたび博物館などの優れた施設に触れながら、気がかりな点もあるとのこと。

「地理的にアジアの玄関口にありながら、北九州が別府や阿蘇に行く観光の通過点になっているのでは」とも。そこで、公害の町から環境先進都市へと生まれ変わった経験を生かして、アジア諸国に対してもっとPRしてはどうかと渡部さんの話しは続きます。

「北九州市は先日、国の『環境モデル都市』に選ばれました。指定を受けた6市町の中で、唯一アジア戦略をあげたことが評価されたそうですから、これからの先進的な環境活動が観光の目玉になって、アジアの人々が大勢訪れるようになるといいですね」。

このほか、今は北九州を離れて暮らしているお子さんたちが帰ってくると、新鮮な魚を食べられることを喜ばれるとか。「地元でとれる新鮮な魚や野菜など食材の豊富さ、さらには市内の端から端まで都市高速を利用すれば1時間ほどで移動できる交通の便の良さ。この町には地元の人でも気が付いてない魅力がたくさんありますよ」。

住んでいる町が好きだからこそ、渡部さんが種まきをする市民センターでの活動が、これからも地域の人々の共感を集めていくことでしょう。

インタビューを終えて

チャレンジ精神旺盛で、いつも積極的に新しい分野を切り開いてこられた渡部さん。有能な女性がまだまだたくさんいるので、もっと多くの女性に館長の一般公募に挑戦してほしいとのこと。いくつなっても何かを始めることができるということを教えていただきました。

レポーター/崎間恵子

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